偏食への向き合い方①嫌いなものを食べられるようになってほしい

健康

「女心と子どもの嗜好は秋の空」とは、私が勝手にいっているのですが、子どもの嗜好は本当に移ろいやすくて、つかめないですよね。
昨日まで喜んで食べていたのに突然食べなくなったり、反対に今まで食べられなかったものが突然食べられるようになったり……。とくに、幼児期はその傾向が強くて、こちらは振り回されっぱなしです。
幼児期あるあるなので、「深く考えすぎない」と割り切るのも一つですが、とはいえ、大切な幼児期ですから、「何とかしたい!」と悩まれる親御さんが大半ではないでしょうか。
そこで今回は、子どもの偏食について、そのメカニズムと、今日から取り組める偏食改善プログラムについてお話しします。

子どもの「好き」「嫌い」とは

子どもにとっての「好き」は、気に入っているもの、慣れているものです。
一方、「嫌い」は、飽きてしまったもの、食べづらいものです。

冒頭でお話しした、「昨日まで喜んで食べていたものを突然食べなくなった」現象も、単に子どもが食べ飽きてしまっただけという可能性が大きいです。「好き」「嫌い」を行ったり来たりするのは、ごく普通のことなので、ひとまず安心してください。

「嫌い」なものを食べられるようにするには

これを逆手にとると、慣れているものは「好き」になることがあります。

小さいうちは、新しい食べ物への警戒心が強いといわれています。自然界では安全な食べ物ばかりではないですから、防御機能として本能的に備わっています。個人差はあるものの、この現象は、早くて生後12か月から現れ、2~6歳まで継続して認められることが分かっています。

ですから、一度食べないからといって、その後に食卓に出さないのではなくて、最低8回は出すようにしましょう。難しいことは考えず、一緒に食事をする人と同じ内容の食事を並べておけば大丈夫です。

周りの大人がおいしそうに食べる姿を見て、その食べ物が「安全」であることを示すのも、子どもが食材に「慣れる」近道です。決して、子どもだけ「食べないであろう」食材を抜いて提供するということはしないようにしましょう。見慣れてくれば、「食べてみよう」という気持ちが自然に湧いてくるかもしれません。

声掛けが大事

さて、「見慣れてくるまで出す」ときに気をつけたいのが、声掛けの仕方です。

つい、「食べなさい」「ひと口だけでも」「どうして食べないの」といってしまうのですが、NGです。逆にプレッシャーを与えてしまい、トラウマになって、幼児期のみならず大人になっても食べられなく恐れがあります。

ポイントは、8回かけて、ちょっとずつその食べ物に興味をもたせる、というステップを踏むこと。
例えば、ピーマンなら、

1回目…「これ、ピーマンっていう野菜だよ。」(紹介)

2回目…「○○くんの好きな“○○マン”と名前が似てない?(笑)」

3回目…「ピーマンを食べたら、○○マンみたいに強くなれるかも!?」

4回目…「お母さん、○○マンになろうかな。(といいながら食べる)」

5回目…「今日のピーマン、きれいな緑色じゃない?」

6回目…「これ、さっき一緒にお買い物したピーマンだよ。」

7回目…「暑くなってきたから、ピーマンのおいしい時期だね。」

8回目…「おいしい!○○くんも“ひと口”食べてみない?」

8回目でやっと、「食べてみない?」といいます。
そして、ひと口食べたら、「ピーマン食べたね!」と事実を肯定してあげて、「もうひと口」とはいわないようにしましょう(我慢!)。自分からもうひと口食べるなら、もちろんそれはOKです。
すでに「食べられた」という経験済み(慣れている)なので、次回ピーマンが出てきたときも、比較的スムーズに食べられると思います。

8回やって無理なら、さらにもう1ターン追加です。
子どもの「嫌い」に向き合うのは、これくらい時間がかかります。必要なのは「根気」ですが、あまり思いつめてしまうと、NGワードをいってしまいそうになるので、くれぐれもお気を付けください。私も経験者です(笑)
しんどいときは、一旦その食材から離れて、忘れたころに(自分のメンタルが落ち着いたときに)、もう一度プログラムを再開してもいいと思います。

「嫌い」な食べ物が1つや2つで、偏食の程度が軽いなら、こんな感じでお付き合いいただければと思います。しかしながら、あれもこれも食べない、○○しか食べない、という偏食の程度が重い場合は、別の方法を考えましょう。その話は、また次回。

まとめ

子どもは、慣れているものは好きで、慣れていないものは少し苦手です。そのため、初めて見る食材は食べられない場合がありますが、慣れるまで(最低8回)食卓に出し続けることが大切です。
その際、大人が同じものをおいしそうに食べること、8回に分けて、子どもの興味が湧いてくるようなポジティブな言葉をかけ続けることが大切です。「ひと口だけ食べてみて」という言葉を掛けるのは、子どもの興味が湧くまで(8回目まで)は我慢しましょう。

参考資料:
『医師が教える 子どもの食事50の基本』(ダイヤモンド社)
『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)
磯田友子ほか(2024):小児の摂食嚥下障害専門外来における偏食に対する取り組み,障歯誌45

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