「日本は食料自給率が低い」と言われていますが、なぜ低いのでしょうか?
低いとどんな不都合があるのでしょうか?食べものが私たちの生命維持に不可欠なものであるからこそ、無関心ではいられません。
この記事を読めば、食料自給率を上げるために、自分が今すぐに行動できることが分かります。ぜひ参考にしてくださいね。
まずおさえよう:食料自給率とは?
ざっくり言うと、食料自給率とは、食料に占める国産の割合です。
日本の食料自給率(カロリーベース※)が38%(令和4年度)なので、日本国民が食べたものの38%が国産、62%が外国産というわけです。
もしも、外国からの輸入が途絶えたら、あなたは38%の食べもので生きていけますか?
※経済的価値を表す生産額ベースの食料自給率は、令和4年度で58%
食品別の食料自給率を見てみよう。
令和4年度の食糧需給表(概算)によると、
食品別の食料自給率は
コメ 99%
小麦 15%
イモ類 70%
大豆 6%
野菜 79%
肉類 53%(飼料自給率を考慮すると8%)
鶏卵 97%(飼料自給率を考慮すると13%)
牛乳・乳製品 62%(飼料自給率を考慮すると27%)
魚介類 54%
海藻 67%
油脂類 14%
きのこ 89%
飼料自給率というのは、家畜のエサに占める国産の割合です。
飼料になるトウモロコシや大豆油粕などの多くは輸入で賄われており、自給率はわずか26%。
そのため、純粋に国産のエサで育った国産の肉は8%しかありません。
どうして食料自給率が低い?
昭和40年度の食料自給率は73%。この60年間で何が起こったのでしょうか?
- 生産量が減った。
- 日本では自給しにくい(生産しにくい)ものをよく食べるようになった。
- 中食・外食・加工食品の利用が増えた。
- 超加工食品の利用が増えた。
順番に見ていきましょう。
1.生産量が減った。
高度経済成長期、日本は工業製品を海外に輸出して経済が発展しました。
工業に人手が必要なため、農業人口が減り、その分生産量も減りました。
さらにこの時代、ファストフードやファミリーレストラン、冷凍食品やレトルト食品などが登場。食の欧米化が進み、日本人のコメの消費量が減ってしまいました。
その結果、コメを余らせないように、生産量が減らされました。昭和31年に全国に332.0万haあった田は、令和4年には235.2万haまで減少しています。
参考:https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sakumotu/menseki/r4/kouti/index.html
2.日本では自給しにくい(生産しにくい)ものをよく食べるようになった。
上の品目別の食料自給率から、小麦と肉、油脂類の自給率が特に低いことが分かります。
食の欧米化で肉や油脂類の消費量が増えました。
一人当たりの年間消費量を昭和40年と令和3年で比較すると、畜産類は24.8㎏増、油脂類は7.6㎏増加しています。
国内で自給しにくい食品の消費量が増えれば、当然自給率は下がります。
また、同時期にコメの消費量が減少したのは前述の通りですが、単純にパン食が増えたことだけが原因ではなさそうです。
なぜならコメの消費量60㎏減に対して、小麦の消費量が3㎏程度しか増加していないからです。
主食(穀類)の量が減り、主菜(肉など)の量が増えるという食生活の変化を反映しています。
参考:https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2302/spe1_01.html
参考:https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-11.html
3.中食・外食・加工食品の利用が増えた。
自分は国産のものを選んでいますという人でも、知らず知らずのうちにたくさんの輸入食材を食べています。
お惣菜や外食、加工食品の原料の産地まで気に掛ける人は少ないからです。
4.超加工食品の利用が増えた。
さらに、加工食品を超えた「超加工食品」の利用も増えました。
超加工食品は、少しの“食べもの”に対して大量の添加物が加えられています。
例えば、インスタントラーメンの食品表示をみると、ズラーっと並んだ原材料名。
小麦粉は分かりますが、植物油脂ってどんな植物なのでしょう?菜種、パーム、トウモロコシ、ヒマワリ、大豆…これだけでは分かりません。
ちなみに世界の大豆油の供給量は、ここ50年間で320%も増加しているそうです。油脂類は自給率が低いですが、超加工食品に多用されています。
参考:『「食べる」が変わる「食べる」を変える』(原書房)
食料自給率を上げるためにできること。
- 大きなこと
農業に従事する。
農村人口が減ることは過去にもありました。
例えば、江戸時代は鎖国のため、海外から食料輸入はできませんでした。
食料自給率は必ず100%維持しなければなりませんでしたが、江戸=都会に人が集まり、農村人口が減ってしまったのです。
焦った幕府は、旧離帰農令や人返しの法を出し、お金を出して農村に人を戻し、食料増産を狙いました。
日本は高度経済成長期、都市に人口が流出しましたが、もはや工業の伸びしろも以前ほどありません。
都市でお金を稼いで食料を買うというスタイルは果たして昔ほどメリットがあることなのでしょうか?
それならば、都市部の人口を農村に戻し、食料増産をした方が、国民のためになるのではないでしょうか。
しかも今は、多種多様な働き方がある時代です。
地方で農業をしながら、リモートワークで別の仕事をするというのもアリなのではないでしょうか。
- すぐできること
- コメを中心に野菜をたっぷり使ったバランスの良い食事をする。
- 国産を選ぶ。
- 生鮮素材を使った料理をする。
- コンビニで迷ったら、おにぎり!
順番に見ていきましょう。
1.コメを中心に野菜をたっぷり使ったバランスの良い食事をする。
自給率の高いのコメ、野菜、きのこ(左から順に自給率99%、79%、89%)をたっぷりと食べれば、おのずと自給率が上がります。
2.国産を選ぶ。
食品表示を見て、国産肉、国産小麦を選びましょう。
加工品も「国産鶏肉使用、国産白菜使用」など表示されているものを選びましょう。
3.生鮮素材を使った料理をする。
加工食品で知らず知らずのうちにたくさんの輸入食材を食べているかもしれません。
生鮮品から自分で料理を作る機会を増やしましょう。
4.コンビニで、迷ったらおにぎり!
小麦が原料のパンよりも、コメが原料のおにぎりを選びましょう。
まとめ:誰でも1日3回、食料自給率の上昇に貢献できる。
「大きなこと」にチャレンジする人が増えるには、国家レベルの施策も必要でしょう。
食料自給率はここ30年、ほぼ変わらず40%前後で推移しています。
この閉塞感・不安感を断ち切るために、まずは私たち一人一人が「すぐできること」を今日からやりましょう。
日本の人口は1億2144万1千人(令和5年12月時点)。
ちりも積もれば山となる。
1日3食、1億積もれば何かが変わる!
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